論 考

抱きつかれ心中か!

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 イスラエルが、ガザ(ハマス)の地下道に海水を注入するという。これを大々的におこなえばガザの淡水供給に影響が出ることが懸念される。

 12日、国連総会は「人道目的の即時停戦」を決議した。193カ国中153か国が賛成した。アメリカなど10カ国が反対、他は棄権したが、ロシアのウクライナ侵攻に対する決議の140か国を上回っている。

 バイデン氏は、ワシントンの集会でイスラエルの「無差別攻撃は国際社会の支持を失う」と語った。認識は正しい。アメリカ国内では一枚岩のイスラエル支持が崩れて、国内世論分断の1つとして大きく揺さぶっている。

 EU外相は、「第二次世界大戦で、ドイツが経験した破壊よりもガザの破壊は甚大」「信じがたい数の民間人の犠牲」を指摘した。

 このドサクサに、イスラエルはヨルダン川西岸へ1700戸の住宅を建設しようとしている。これもまた、国際社会の非難を大きくする。

 ネタニヤフはブレーキがかからない。ハマスは国家ではない。それを国家扱いしてイスラエルの自衛権を強調するが、やっていることはパレスチナの壊滅である。

 戦争は、外交の一部であるはずだが、全然外交がない。外交が存在しない戦争は、言いたくないが、要するに相手を殲滅することが目的である。このような戦争に人道もへったくれもありはしない。

 ネタニヤフは、アメリカが許容する範囲で戦争している計算だろう。果たして、バイデン氏の真意を理解しているかどうか疑問だ。

 アメリカはイスラエルに抱きつかれて、国際的信用をどんどん落とす。民主主義による世界秩序維持の看板はどんどん汚れていく。

 バイデン氏が真意を伝えるためには、少なくとも、国連決議に反対するべきではなかった。ネタニヤフを止めねばならない。