筆者 難波武(なんば・たけし)
――ユダヤの人々がナチスのホロコーストによって過酷悲惨極まりない体験をされたことは、誰でも知っている。だから、ゴタゴタがありつつも、イスラエルの建国(1948)は、立派な国ができるようにとの期待が込められていた。
30年ほど前、イスラエルのキブツ(農業共同体)を訪問した先輩は、人々とりわけ若者が元気よく働いている姿を見て、とても感動したと話された。見たことのないわたしも、素晴らしいと共感した。
そんな小さな体験から見ても、いまのネタニヤフによる右翼ファシスト政権が存在するのは理解しがたい。おそらく、右翼ファシストが台頭するような事態だから、イスラエル社会も健全さを欠いているのだろう。
わがほうがエラそうに言える立場ではないが、やはり、歴史から何も学んでいない結果だと言わざるを得ない。
もはや、イスラエルがかつて世界に1つの光明をもたらしたことなど絵空事でしかない。
ヘラクレイトスのパンタレイ(万物は流転す)はその通りだと思う。世界は無常、万物は変化して留まることがない――のではあるが、変化に対応するプロセスは逆行を求めないはずだ。
悪しき歴史を繰り返してどうするんだ。イスラエルに人間の良識が復活するように心から期待するのみ。