論 考

戦争はテロでしかない

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 ガザのシファ病院へイスラエル軍が入った。その以前から、病院の凄惨な状態が報じられていた。ジュネーブ条約第4条が、ハマス掃討を名目として破られた。

 ここまでの動きをみると、イスラエルとパレスチナ双方が話し合う動きがない。カタールなどが、ハマスとの仲介をしているが、イスラエル側の仲介をする国がない。これは奇妙である。

 パレスチナ側が混乱していて、然るべき交渉相手がいないというのは、イスラエルの方便だが、交渉に入る前に、できるだけハマスを叩く、つまり、パレスチナの人々をどんどん窮地に追い込むというのが本音だろう。

 イスラエルは、国連パレスチナ難民救済事業機関UNRWAで働く人々がハマスのメンバーだと決め付けている。そうすると、国連職員が100人以上死亡したというのは単に巻き込まれたのではなく、はじめから区別なしで攻撃していたことにもなろう。酷い話だ。

 イスラエル側の人質解放の声が聞こえない。ネタニヤフはハマスを叩けば叩くほど人質解放に有利だというが、ハマスが病院を盾としているとして攻撃したことからすれば、人質もまた病院と同じ扱いになっている。

 トルコのエルドアン大統領は、イスラエルをテロ国家と呼んだ。なるほど、政治的解決のためでなく破壊と殺戮が目的化しているのだから、その指摘は外れてはいない。

 パレスチナを救えという声に対して、イスラエルは、テロを擁護するのと同じだというが、戦争が破壊・殺戮目的に絞るなら、テロと何も変わらない。

 15日、国連安保理事会で戦闘休止を求める決議が採択された。米英ロは棄権したが、拒否権は行使しなかった。まだ、介入の動きが見えないのでやきもきするばかりだ。

 おりから米中首脳会談である。パレスチナ戦争の解決へ向けて共同作業をすれば、最高の米中関係改善につながると思うが。