論 考

マスク的教材

 民主主義というのは、1人の意見・行動が他者と同等において、表明され、自由に行動できることだ。あらかじめある人の意見・行動が他者の異議申し立てに対してあきらかな優位性をもつのではない。

 マスク氏は、ツイッターを価値ある公共空間にすると語ったが、実際にやっていることは、自分のプライベート空間に、みなさんいらっしゃいと言っているようにしか思えない。

 マスク氏は社会的・経済的に大きな力を有する。それは、自身が努力を重ねて獲得したのだから立派である。

 ただし、公共空間という以上は、マスク氏の恣意的なものであってはならない。マスク氏が提供した空間であっても、そこで氏がオールマイティになったのではナンセンスである。民主主義ではない。

 米国的民主主義のきわだった特徴は、個人の自由が最大限発揮されやすいことだが、力のある人だけがそうなのであれば、なんのことはない。それは専制主義である。

 民主主義が普遍的原理とされるのは、あまねく1人ひとりの課題である。社会的・経済的に力があることが、他者の自由な精神を抑制するとか、圧迫するのであってはならない。

 マスク氏の一見派手な言動には、民主主義を1人ひとりが考えるための勉強の材料が提供されている。単純な話、マスク氏が本当にデモクラットであるかどうか、よくよく吟味しなければならない。