論 考

ウクライナ戦争の行方

 プーチンは、攻略目標をドンバス地方へ絞って、順調にいけば、第二次世界大戦の対独戦勝記念日である5月9日に勝利宣言を発するという観測が出ている。

 しかし、勝利というにはみじめなもので、国内では形がついたとしても、世界においては、まちがいなく大敗戦である。

 経済制裁は、世界各国にも影響が出ているが、ロシア国内は経済失速で、超インフレが起こり、早晩、人々の生活が苦しくなる。

 ウクライナとの交渉も、日を追って不利になる。ロシアは孤立せざるを得ない。

 ウクライナ戦争の処理は非常に難しい。なにしろ、殺傷と破壊が半端でない。これ以上の馬鹿はやらないでほしいが、プーチン個人にすれば、まちがいなく追い込まれている。

 アメリカは、ウクライナによる代理戦争の勝利にご機嫌であっても、雨降って地固まる的な和平へ導く気はまったくないだろう。それをお見通しだから、中国は軽々には動かない。

 NATOを巡る確執が原因だから、米欧・NATOが積極的に動かねばならない。和平交渉の在り方は非常に難しい。第一次世界大戦終了のときのような手荒なことをやれば、大きな火種を残す。

 日本の報道では、プーチン・ロシア叩きばかりに熱が入って、戦争問題の本質を考える記事がほとんどない。しかも、おおかたの情報は西側のものである。もう少し、中身のある報道がほしい。

 戦争を始めたのはプーチンだが、好むと好まざるにかかわらず、プーチンだけでは収束できない。みんなが考えるための材料が必要だ。