論 考

マイスタージンガー

 昨夜はNHKのFM放送で、今年のバイロイト音楽祭での、楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』を聞きながら寝た。誰でも知っているワグナー(1813~1883)の作品であるが、初めて聞いた。

 4時間以上もある。半分はうとうとしていたし、物語はほとんどわからないから音楽と歌唱を聞いただけ。ちゃちなラジオであるが、迫力は十分に感じた。

 初演は1868年、明治元年というわけだ。

 マイスタージンガーというのは、中世から近世にかけて、ドイツ手工業者ギルドが与えた称号マイスター(親方)の歌手で、親方歌手である。

 ワグナーがモデルにしたのは、ハンス・ザックス(1494~1576)というマイスタージンガーで、靴屋である。16世紀半ばの有名人だという。

 彼らは、仕事の腕前だけではなく、詩や歌の腕前を競った。日本では、1980年代に「一芸社員」になろうと提唱されたことがあるが、もっと本気で労働者芸術家をめざしたのだから、その生き方は、いまも注目に値する。

 なにしろ余芸(一芸社員)ではなく、芸術の道を突き進むのだから素晴らしい。そして、労働者の価値と誇りが極めて高かったとも言えよう。