論 考

働く人の元気が出ないわけ

 産業界では、30年来、どうも活気がなく、人々が「働き方」において、自身の能力発揮をできていないという問題意識があるようだ。

 ようやくと言うべきか。少なくとも、この問題意識は悪くない。30年来といえば、バブル崩壊後の1990年代からである。会社の中堅クラスであれば、口には出さずとも、大方の人々共感するだろう。

 わたしは、1980年代から一貫して警鐘を鳴らしてきた。人事面からすれば、実は40年来というのが妥当である。

 84年に、拙著『今、人事部にロマンがあるか』を上梓して、バブル経済において人事行政が緩んでいることを指摘した。当時の経営・人事のキーワードは、「活性化」であった。そして、その結論方向は、「自己啓発しましょう」というのだったから、なんともいやはや、無為無策としか表現できない。

 のちに回顧すれば、80年代は日本的人事が陥没した分岐点である。90年代後半からは、成果主義が鳴り物入り喧伝されて、いずこの会社も、「ぼやぼやしていたら置いてきぼり」だと脅かしたものだ。

 成果主義が日本的人事の再建に有効でなかった事実も残る。

 結論からいえば、単純に利益至上主義に立つのではなく、「働き方」としては、人々が「labor⇒work⇒action」の文脈を意識的に志向する組織風土を建設するべきである。

 利益至上主義は、結局、働き方をlabor段階に閉じ込めてしまっている。これが理解できるか、どうか。それが問題だ。