論 考

大学ファンド

 大学ファンド10兆円構想が始まる。他国に比べて研究力の劣勢が感じられる。誰もが先端的研究に参加することはできない。能力のある人が、研究活動に打ち込める環境を作るのはおおいに大事だ。

 半導体時代の幕開けのころ、わたしのいた会社は、半導体研究開発製造に思い切って2,000億円投じたことがあった。素人目にも経営陣の大英断で、おおいに期待した。ところが、実際は資金を使い切られなかった。残念ながら資金を使い切る「人間力」が不足していた。

 一方で、多くの研究者が、「儲けにつながる研究をやれ」と半分以上嫌味を言われる事情もあった。素人が聞いて直ぐに理解できる程度の研究開発は高さも裾野も広くないのが体験則だ。上司が理解できないのは嫌味の対象になる。

 大学ファンドは国の肝煎だから、知恵のある人がたくさんおられようが、傾向としては、過去の体験のような事情を抱えている。おカネを出せば遠からず視界が開けるという単純な思い込みが強いと、せっかくの政策が生きない。

 これぞと目をつけて突っ走ってもうまくいかないこともある。マイナスを心配すれば際限がない。とりあえず、全体像が形になるまで、辛抱する舵取りが求められる。地味な動きだが、育てたい課題だ。