論 考

自民党のアイデンティティ

 岸田氏の宏池会の先輩である宮沢喜一氏(1919~2007)は、戦前的思想を強行に押し出す党内勢力の扱いに苦心したと語った。外から見ていてもよくわかる。頭に愛国心を掲げてガンガン言いたい放題するのが、連中の特徴であった。

 石原慎太郎氏は、米国に対してもNOと言うと威勢がよかった。重武装防衛論も展開した。首相にはならなかった(なれなかった)から、いざ、外交でどんな旗振りをしたのかはわからないが、一応の理屈は通っていた。

 現実は、時代が下がるにつれて、日米同盟が世界平和の根幹だという美辞麗句によって、中身は米国べったり依存で、対米追従、対米従属を深化させている。小泉内閣からは、さらにステップアップした。

 安倍氏は党内一の戦前的保守イデオローグらしい。米国追従も人後に落ちない。威勢がいい割に、どうも腑に落ちない。

 岸田氏は、中国にも物申す方針らしいが、中国は米国とがっぷり四つであるから、土俵の下で恰好つけても、本気で聞いてはくれないだろう。むしろ、物申すのであれば、米国に向けて、世界平和に貢献する提案をするべきだ。

 わたしは、いろいろ考えてみるが、いまだに自民党的アイデンティティが理解できない。とくに、皆さまがお好きな愛国心の中身については、さっぱりわからない。ぜひ、今度の選挙戦ではしっかり語っていただきたい。