論 考

民主主義の発展で資本主義を統御する

 一昨日は、「岸田公約が実現すれば世界が拍手喝采だ」と書いた。皮肉やおちょくりで書いたのではない。岸田氏が「新しい資本主義」に挑戦する志は買う。 

 資本主義の本質を煮詰めれば利益である。産業革命以降、資本主義が世界の経済を作ってきた。利益を全てに優先すれば、社会における人間関係は確実に破壊される。

 明治時代に後れて出発した日本の実業家連は、儲けることに急激に目覚めたが、ややポンチ絵風にいえば、彼らの発想は「汗をかく・恥をかく・義理をかく」という一語に尽きた。

 テレビで渋沢栄一が人気らしい。「論語と算盤」に感激する人が多くても、小泉内閣(在2001~2006)以来、かの竹中先生を軸として形成されたのは、1に算盤、2に算盤、3、4がなくて5に算盤だった。

 インフレ2%論を引っ提げて大きなホラを吹いた黒田日銀も、人々が単純に算盤だから、直ちに反応すると考えたわけだ。しかし、大失敗した。恥をかき・義理をかいて平然としている。

 岸田氏が自民党総裁に決まって以来、株が下がった。菅氏が辞任表明したら上がったのに、岸田氏が総裁になったら下がった。もちろん、中国恒大問題あり、エネルギー値上げあり、すでに世界が超バブルであって、不安定な事態にあるから、市場が岸田イジメをしているのではない。

 要するに、経済の血液を担う金融市場なるものの価値観は唯一「儲け」でしかない。露骨にいえば、この世界は民主的政治であろうが、専制政治であろうが、「儲かればいいのよ」というセンスである。

 ご立派な資本主義の皮をむいていけば、中心に「カネ様」が鎮座まします。はっきり言えることは、首相とて蟷螂之斧にすぎない。経済学者はわが国にも数万人いるはずだが、これにメスを入れた人士の声が聞こえるだろうか。

 思うに、経済第一主義の思想を転換するのは革命的である。それに挑戦するためには、大衆民主主義を育てて、人々が本気で社会のあり方を模索するようになる必要がある。だから安倍・菅政治をきちんと総括しなければいけない。わたしは本気で提言している次第だ。