論 考

岸田公約が実現すれば世界が拍手喝采だ

 岸田内閣発足。前評判では、早くても10月26日公示・11月7日投開票で衆議院議員選挙と予想されていたが、岸田氏が、10月19日公示・10月31日投開票に踏み切った。

 現議員の任期満了が10月21日であるから、少しでも新議員との日程を縮めるという理屈はわかる。コロナ感染が収まっているうちに、国会での論戦を避けて早く選挙をおこなおうというボロ隠し選挙だという批判があるが、隠してもボロは出るに決まっている。

 ご祝儀相場で乗り切れるのであれば、それは有権者のセンスの問題だ。安倍・菅政治の総括をするのだから、選挙が早いほうがよろしい。

 わたしは「新しい資本主義」という言葉に、大風呂敷以上の無責任な軽薄さを痛感する。どうやら、それは「新自由主義」のアンチテーゼである。だから正しくは「アンチ新自由主義」というべきである。

 資本主義に新しいも古いもない。いわば、自由放任(レッセフェール)に流れるか、それを抑えるかの2面しかない。

 「新しい資本主義」を構築できるならば、まちがいなくノーベル経済学賞である。ノーベル経済学賞を受けた、J・R・ヒックス(1904~1989)は、『経済史の理論』(1969)において、「資本論以降100年、社会科学のめざましい発展があったにもかかわらず、ほかにほとんど見るべきものが現れなかったのは、明らかに異常である」として、経済学理論の衰退を嘆いた。

 いまはヒックスの痛切な指摘以来、半世紀を経たが、相変わらずその指摘は生きている。しかも、『資本論』は、地球環境・資源問題など論外だった時代に書かれた。誰かのアンダーコントロール下にあると噂されている岸田氏が、「新しい資本主義」を開発するなら、日本の首相どころではない。米国大統領も中国国家主席も、いや、世界中が拍手喝采するだろう。

 わたしは、恐れ入りましたというしかない。