論 考

コロナの心配するのが政治的か?

 西村泰彦宮内庁長官が定例記者会見で、「天皇がコロナウイルス感染拡大の懸念をしている――と拝察している」発言は、天皇の発言だと前提して一言感想を書いておく。

 憲法において天皇は政治的発言をせずというのは前提である。

 そこで、「コロナ感染拡大を懸念している」というのが政治的発言かどうか。町では多くの人々がそのような会話を交わしている。政治的というよりも、極めて庶民的感覚の発言である。(もちろん、社会において、人々のすべての発言・行動が政治性を持つという大きな意味ではなく、限定した意味である)

 ところが、都議選をはじめ、コロナと五輪の関係が論争点として浮上しているから、天皇発言が政治的に利用されると批判する。

 そもそも、五輪を政治的に利用してきたのは政治家自身である。五輪で勢いつけて政局を乗り切ろうとして、好き放題やってきた。

 本来、五輪は政治を超越したものであるから、五輪とコロナという、普通の人々の関心を慮った天皇発言自体にはまったく政治性はない。

 このような政治家連中のご都合主義こそが、戦前天皇制における権力者連中の天皇利用と重なって見える。