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ますます激化、日本の切り売り

司 高志

 官庁が特定の業種や会社を優遇して、日本切り売りをどんどん拡大している。なかでも最も日本国民を貧しくしてしまったのは、派遣制度であろう。

 国鉄や郵政民営化会など、民間の方が効率が良いからという理由で三公社五現業を民営化しだしたころから、国の機関や地方公共団体の機関を独立行政法人化した。国、地方自治体、独立行政法人では、非常勤公務員をどんどん増やしている。同時に官庁が行う業務の外部委託を進め、住民へのサービスを低下させている。外部委託すれば費用は下がるが、仕事の質も比例する。その分税金が安くなるわけではなく、結局損をするのは納税者だ。

 非常勤職員を「任期付き」という名称で雇用し、5年たったらその機関での次の雇用をしないという、きわめて人心を不安定にさせる制度を進めている。この流れで正社員の数を減らし、日本全体の人件費の額を減らしていった。だが「アベ友」といわれる、権力中枢にいるお友達には特典を付与することが、国民にはわからないように行われていた。ときどき文春などでその優遇ぶりが暴露されることはあったが、その全体像ははっきりとはしない。

 さて今回の総務省の接待疑惑も、その闇のほんの一部ではないかと思われる。なにしろ国民には全体像が分からない。総務省に群がっているのは電波の利用者で、その人数は限られており、利用者の入れ替え戦が行われないように、何かと便宜が図られてきた。

 今回非常に腹立たしいのは、総務大臣を筆頭に「バレるまでは嘘を付き通す」という姿勢だ。特に総務大臣は、国民に疑問を抱かせるような会食はしていないという詭弁を繰り返し、国民を大いにコケにしてくれた。なぜそういうことが言えるのか? それは、接待の場では、そういう直接的な話はしないからだ。

 事業者が担当者を接待する目的は、必要以上に細かい資料の提出などを要求しないようにという「願い」が込められる。担当者が気に入らなければ細かい質問を繰り返し、故意に許可を遅らせるなどのことができる。そういう意地悪をしないでねというお願いの見返りが接待であり、宴会の場では、露骨で直截的な要求は口にしない。幹部クラスへの接待では、許可などに関して部下に注文を付けたりしないで、すんなり認めてくださいという無言の要求であり、これまた、露骨に口に出したりするものではない。よって直接証拠は上がらない。だから冒頭の、「国民に疑念を抱かせる接待はない」と言い切れるのだ。

 アベ友の公文書改ざんや今回の接待疑惑のように、本来人の上に立ち、自らが範を示すべき人間が積極的に悪事をなして、悪事とは無縁の木っ端役人を取り締まっているのだからどうしようもない。泥棒グループの親分が警察庁の長官をかけもちしていたり、放火魔が消防のトップだったり、という具合だ。次回衆院選では、今回ばかりはよくよく考えて投票していただきたい。