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一部労組に「!?」湧く21春闘

おかぼん

 「1月は行く」「2月は逃げる」「3月は去る」と言うが、今年も早4月である。昨年3月に新型コロナウイルス蔓延を理由に賃上げ抑制など言語道断、積み上がった内部留保を原資にしてしっかり賃上げをと訴えてから、もう1年余りが経つ。月日の経つ速さに驚くばかりだが、1年経ったところで未だコロナの収束の目処経たず、である。

 さて今年の春闘も山を越えたが、依然として企業の回答は厳しく、総じて昨年比マイナスの様相である。それにしても、今年は一部労働組合の態度にも疑問も抱かざるにはいられなかった。

 日本経済新聞によれば、この会社は大手携帯事業会社の1社で、4 ~ 12月期の純利益は8年連続の最高益であったが、何とベアの要求を見送ったのである。理由は菅政権の要請による携帯電話料金の順次値下げにより、来期以降の業績への影響が不透明だからだという。こんな物わかりのいい労働組合で果たして存在価値があるのだろうか。

 では、普通ならば反対の立場の経営側はどのように認識しているかと言えば、非通信分野などを強化して、2020年3月期も増収増益を狙っていると、強気の回答である。と言いながら、昨年は月例賃金の2%引上要求に対して、地域職社員だけの改善に留めて、会社は最高益を上げるのである。

 これでは一般組合員はどこに訴えたらいいのであろうか。経営側の指示により職務に専念した結果、会社は最高益を上げ来期も業績は好調と言いながら、労働組合はベアの要求をせず、当然会社側から逆提案などあろうはずもない。これでは嘆息が漏れるばかりである。

 それどころか、昨年指摘した某企業のように、新型コロナウイルス蔓延の終息が見通せない中、最高益を上げたところで、希望退職を募るのではないかと疑心暗鬼になりかねない。

 年度末の最終日、帰宅途中で乗った電車が停車した駅で、反対側に入って来た電車に人が飛び込んだ。このところ人身事故が目立つ。先行きに希望を失った労働者の飛び込みは何としても防ぎたいものである。