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増え続ける医療費にはカネより知恵を

おかぼん

 増え続ける社会保障費を抑制するため、政府は来年10月から薬価の引き下げで400億円、所得の高い会社員の介護保険料引き上げで350億円、生活扶助費の見直しで50億円、合計800億円社会保障費の増加を抑えるという。

 もっとも自然増が6000億円からしてみれば、焼け石に水の状態である。一方で医療の負担増改革は見送りの公算が大という。来夏の参院選をにらんで、と聞くが、選挙があるごとに有権者の顔色を伺うようなことをしていれば、抜本的改革などできようはずはない。

 大阪万博が2025年に開催されることが決まったが、前回1970年の大阪万博当時の医療給付は僅か2.1兆円であった。それが2016年には41.3兆円と大きく増えてきている。物価ももちろん上がったが、郵便封書料金(定型最低料金)が15円から82円にしか上がっていないところを見れば、突出しているのは一目瞭然である。

 原因は高齢化である。100歳以上の高齢者は1970年当時僅か310人、それが2018年には69,785人に増えたことからも明らかである。2015年度の国民医療費が42.3兆円、このうち後期高齢者医療費が15.2兆円、対前年度伸び率が3.8%、道理である。

 このような状況下で政府が考えることはというと、やることは同じで数字だけが動いているという印象が強い。薬価の引き下げしかり、後期高齢者の窓口負担引き上げしかりである。

 これでは増え続ける社会保障費を抑制することなど夢のまた夢である。

 例えば、私が外来で医院に行くとまず検査である。そして、検査の結果が出た頃にまたお越し下さい、と帰される。医療機関が異なればこの繰り返しである。通常、医療機関はそう頻繁に変えないことであるが、転勤などがあればやむを得まい。検査結果などは巨大なサーバーで一元管理できれば何回も検査を繰り返す必要はないのである。

 また、私は数年前から年に2回、欠かさず歯医者に行って歯石を除去してもらっているが、必ず上と下と1回ずつ2回通院することを要求される。聞けば、そうして2回通院しないと自費診療になるという。些末なことではあるが、本人は時間の無駄が省け治療代も安くなり、健保にとっても医療費抑制に繋がると考える。

 社会保障費、その中でも増え続ける医療費を減らすためには、数字を動かすこともそれなりに重要ではあるが、このようなハードソフト両面を改革して行くのが王道である。結果的にはそれが一番効果的であろうと信じて止まない。