論 考

日本のマスコミが報じない18歳意識調査

筆者 高井潔司(たかい・きよし)

 アメリカのニュースサイト『ハフィントンポスト』の日本版で、気になる記事を見つけた。

 見出しは「日本だけ違う? 18歳が『人生において大切にしたいこと』、他国が「家族」と答える中、日本で最も多かった回答は」—というのだが。

 この調査は日本財団が行ったもので、日本、アメリカ、イギリス、中国、韓国、インドの各国17歳~19歳1000人を対象に、国や社会に対する意識を調べた。図書館で、全国紙各紙を調べてみたが、どの新聞にも掲載されていなかったし、わずかにフジテレビオンラインと毎日新聞のデジタル版しか取り上げていないようなので、日本財団のHPから調査のさわりを紹介してみたい。

 まず見出しとなった調査項目は「人生において大切にしたいと思っていること」で、10の選択肢(家族、趣味、友達、心身の健康、恋愛、仕事、資産の形成、セルフケア、社会への貢献、その他)から3つまで選択するという内容。回答結果は、イギリスの62.5%を筆頭に日本以外の国々で「家族」が全てトップで、いずれも50%を超えた。日本は趣味が52.5%でトップ。家族は43.8%の2位だった。

 この項目での他国との違いは、それほど深刻でもないが、財団のHPで調査の全容を見てみたら、日本はこれで大丈夫かと心配させるような回答結果が目白押しだった。

 まず「自国の将来について」では、「良くなる」という回答は日本で15.3%、「悪くなる」は29.6%、「どうなるかわからない」が31.5%だった。これに対し、「良くなる」は中国で85.0%、インド78.3%、韓国41.4%。これらの国では「良くなる」が「悪くなる」を大きく上回っている。一方、アメリカ、イギリスは日本同様、「悪くなる」が「良くなる」を上回っているが、それでも「良くなる」はアメリカで26.3%、イギリスで24.6%で、日本よりはずっとましな数字だった。

 言論の自由のない中国で、どのような形式で調査したか、わからないので、中国の数字はどこまで本音を示しているかは信じがたいが、それでも国の将来についての日本の悲観的な見方は深刻だ。

 それは「以下の項目に同意しますか」という質問項目に対する回答でも明確になる。「自国は、国際社会でリーダーシップを発揮できる」に対し、「イエス」は日本で41.1%。他国は中国の95.0%を最高に、最低のイギリスでさえ60.1%で、日本の低さが際立っている。「機会があれば留学や他国で就労してみたい」との問いにも各国とも70%以上がイエスとしているのに、日本は41.1%に過ぎない。

 極めつけは「自身と社会の関わりについて」だ。6つの質問について、調査結果は「同意する」と「どちらかというと同意する」を合わせた回答率を示しているが、日本は軒並み最下位となった。

 「国や社会に役立つことをしたいと思う」に対し、日本は64.3%、アメリカ78.4%、イギリス77.7%、中国93.6%、韓国71.1%、インド85.9%。続いて「自分は責任がある社会の一員だと思う」について、日本61.1%、アメリカ79.4%、イギリス80.7%、中国92.1%、韓国74.5%、インド86.8%。

 日本人にとって、うんざりするような調査結果の連続だが、もう一項目だけ紹介して終わろう。「自分の行動で国や社会を変えられると思う」について、日本は45.8%、アメリカ65.6%、イギリス56.1%、中国83.7%、韓国60.8%、インド80.6%だった。

 以上、私自身、これらの数字を見てうんざりしたので、マスコミが取り上げないのもわからないではないが、「オオタニ選手果してきょうマツイ越えのホームランを打ったのでしょうか」などとノーテンキなニュースを流す余裕があるなら、ちょっと読者、視聴者に考えさせるようなこの調査結果を紹介してはどうだろうか? 厳しい現実から目をそらしてばかりはいられない。