論 考

追い込まれたネタニヤフ

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 ハマスとイスラエルの間で4日間の戦闘休止が合意に行ったのはよかった。

 ネタニヤフにすると、この戦争はパレスチナ壊滅に狙いがあるから、戦争は継続する、止めないと公言している。

 ネタニヤフは今回の戦争の前に、司法制度を行政の下におくとか、汚職疑惑とか、さらには長い強権的統治にイスラエル国民がうんざりして、世論調査では岸田内閣並みに落ちている。

 ネタニヤフの支持基盤は極右であり、国民もパレスチナ戦争については65%が支持しているので、いきおい戦争継続に走る。

 さいきん、人質解放に力が入っていないというネタニヤフ抗議デモもあり、有力新聞が辞任要求を突き付けてもいる。(11/11)

 つまり、実のところネタニヤフにすれば首相の座を放さないためには、戦争を継続するしかないわけだ。

 今回の戦闘休止は以前からカタールが仲介していたこと、バイデンがネタニヤフと14回電話会談した結果である。ネタニヤフは、人質解放は徹底的にハマスをやっつければ実現すると公言してきたから、とりあえず、戦争より人質解放を優先した。

 パレスチナの人々を人間扱いしないことは、実はイスラエルの人々に対してもそうなのである。

 休止が長くなるほど停戦が近づくが、いまの戦況はネタニヤフが国際世論にも押されて、追い詰められている。

 なによりも、戦争より話し合いへの道へ入るためには、イスラエルがパレスチナ国家を認めねばならない。その決断は歴史的大決断であり、戦争を長引かせて泥沼状態を続けるよりはるかに理性的解決策である。

 ネタニヤフが自分の立場にこだわれば、決断のチャンスを逃す。もちろん、極右による暗殺の懸念もある。

 ただたくさんの人々を殺害しただけで終わるか、政治家として踏みとどまるか。ネタニヤフは、いわば窮地にある。