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いよいよ火葬待ち問題が日常に

おかぼん

 今日9月1日は防災の日。関東大震災から100年。しかし、もう生存する被災者は僅かで、東日本に住む私にとっては12年前の東日本大震災の方がはるかに身近だ。そのとき、遺体の多くが火葬されずにしばらく安置されていたことは記憶に生々しい。たまたま震災が早春であったことから、遺体が大きく損傷しなかったことが幸いであった。

 しかし、その火葬待ち問題が平時のいま起こっているのはご存じだろうか。少子高齢化問題は畢竟人口減少問題で、出生数がよく話題になるが死亡数も大きな問題だ。2022年の国内の死亡数は158万2033人で、何と前年より12万9744人も増えた。この10年で死亡数は1.25倍となっており、少子高齢化問題は多死問題となりつつある。

 結果として、遺体が長時間火葬できない火葬待ち問題が生じている。業界団体の全国調査では、3割が最長6日から8日も待機することになったという。これは大変な話だ。葬儀場から遺体安置に1日2万円かかると言われ、火葬までの5日間自宅に置いていたという生々しい話もある。冬場でも遺体が痛んだというが、この猛暑の夏ではどんなことになるのか。想像しただけでも恐ろしい。

 解決するには火葬場を新設することだが簡単ではない。何よりも予定地周辺の住民から理解を得なければならないが、自宅近くに火葬場ができるのを快く思わない住民は多い。また、2040年代には国内の死亡数はピークアウトするため、新設を検討する自治体も少ないのが実態だ。

 火葬を行わない「友引」の翌日。火葬がぐんと増える日だ。ある火葬場では、午前中から夕方にかけてひつぎが次々と運び込まれ、昼前には遺族らが乗るバスが何台も斎場前で入場待ちの列を作った。新設が難しいとなると、友引の火葬や、斎場での待ち時間解消に向けた予約システムの導入など、今後は効率的運用が課題となろう。

 就業規則の忌引き日数も増やす必要があるのではないか。いやいや大変な時代になってきた。