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定年後再雇用の基本給

おかぼん

 定年後の再雇用について、仕事の内容が定年前と同じなのに基本給を半額以下にされたことが不当かどうか争われた裁判で、最高裁は「不合理かどうかは基本給の性質や支給の目的などを踏まえて検討すべきだ」とする考え方を示した。

 正規雇用と非正規雇用の賃金をめぐり最高裁が基本給の格差について判断を示したのは初めてである。

 2018年7月に長沢運輸訴訟の判決を受け、「賃下げ再雇用は企業救済策か」と題して投稿して以来すでに5年も経過した。時の速さに驚くとともに、まだ同様の裁判が続いていることに日本のさらなる凋落を予感する思いである。

 この5年の間にかくいう私も60歳定年を迎え、再雇用で働くか退職して新たな道を選ぶかの判断を迫られた。再雇用を選んだ場合の賃金はフルタイム勤務で概ね定年前の3分の1強となり、これは新入社員の初任給を下回る金額であった。短時間勤務に至っては、何と査定が中位であっても東京都の最低賃金と同額であった。

 この賃金で何の仕事をやるのかと上職に尋ねても明確な回答はなく、私は見切りを付けて新たな道を選ぶことにしたのである。もっともこのような冷遇は、普通の民間企業であれば特別なことではないと聞いていた。従って、定年前の会社を批判する気持ちはさらさらなく、「あなたがどうこうではなく、会社がシニアの再雇用に期待していないだけのこと」という妻の一言に背中を押され飛び出したのである。

 今後高裁で審理がやり直されるだろうが、スピード感を持ってやっていただきたい。常識的に考えて、高齢者再雇用の賃金が新入社員の初任給を下回るとか、最低賃金というのはあり得ない話で、判決に時間をかけてやっていては、ますますグローバル競争から取り残され、失われた◯◯年の繰り返しになりかねない。

 上告前に高裁の出した6割判決、いろいろ問題はあるにせよ、それでも当時の私の再雇用賃金の倍近くになり、それなら会社に残るのもあったかなと思うのは私だけではないであろう。後退のない早期判決に期待したい。