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マイナカードと保険証統合・・・論点まとめ

司 高志

 あまりにひどすぎるマイナンバーカードだが、保険証との統合は今のところ何の説明もなく、世紀の愚策である。…アッ、誤変換も役に立つな。世紀の愚策と書こうとしたが、文字変換機能にも愚策として正規認定されてしまった…と、冗談を言っている場合ではない。

 言葉の言い回しは丁寧だが、何も説明しないことが、「丁寧な説明」となってしまった日本において、マイナンバーカードの推進側と反対側の論点が全くかみ合っていないので、問題点を整理してみたいと思う。

 今回もマスメディアにはあまり出てこないが、どうにも腑に落ちない点を上げながら話を進めていく。

 まず、第一に、マイナンバーカードに対する哲学というか、ポリシーというかが全く感じられないことである。

 もう正直に、徴税機能を強化するために国民にナンバーを振って、完全徴税体制を強化するのだ、と本心を言った方が良くないか? 税の取りっぱぐれをなくせば、平等な徴税になる、となぜいえないのか? 勤め人は、税金面では丸裸状態になっているので、これ以上損はしません。税金を払ってない人だけが徴税強化されるだけです、と言えばよくはないか? それとも違う、別に真の狙いがあるのだろうか? 何を狙いにしたいのか?と関連があるのだが、住基ネットはどうなった、と問いたい。

 なぜ、住基ネットではだめなのか? 住基ネットの改良型でいいではないか?税金を引き上げるくらいなら、住基ネットに使われた税金を返せと言いたい。住基ネットとの違いや、なぜダメなのか、内容ををしっかり説明しないといけない。「丁寧な説明」ではなく、中身を説明してくれ。

 で、ここからは筆者の考えだが、マイナンバーは、行政事務をやりやすくするために、同じ人なら同じ番号で処理しようというだけの話で、行政が勝手に内部処理用に行えばよく、制度自体の根幹を揺るがす必要などないはずである。

 ところがこれでは一向にマイナンバーカードの保有が進まないので、強硬策に打って出た。

取得に際してマイナポイント2万円というアメをしゃぶらせておいたが、ムチの方は強烈だった。保険証の統合である。

 だが、健康保険の方は、現状ではマイナンバーカードに依存しない独立した制度である。国民にとって保険証は、皆保険制度となっているために、誰もが持っている。これをマイナンバーカードと統合するということは、実質的な強制加入である。

 ここで、政府からは説明がないが、推進側からの援護射撃的な論理展開がなされている。どういう事象かというと、紙の保健証は本人確認の機能が弱いため、外国人が他人の保健証を使い回し使いまわししているのだという。なので、保険証をマイナンバーカードにして不正利用をなくすのだとしている。

 この点について政府も何も言わないし、マイナンバーカードの反対側からの言及もない。保険証の不正利用防止が真の狙いであるなら、議論の俎上にのせるべきである。おそらくそれをしないのは、これを持ち出せば、保険証の不正利用は、保険証の制度の枠内で対処すべし、となり、マイナンバーカード取得の促進につながらない。筆者としては、もしも外国人による保険証の不正利用があるとするならば、保険証の制度の中で解決すべきであると主張する。

 次に、マイナンバーカードと保険証が統合された場合、高齢化による更新時の弊害が出てくるのは必至であると予想する。

 今は若くても、やがてはどんな人も年を取る。マイナンバーカードの更新に行けないように体が弱くなってしまうことも起こりうる、誰もがインターネットを使いこなせるとも限らない。記憶力の衰えにより、暗証番号の記憶や記録の管理もできなくなってくるだろう。

 介護施設や福祉施設に入ると保険証を施設に預けるようになる。施設でマイナンバーカードと暗証番号を管理することになるが、施設として、そこまで責任を負いきれるのだろうか? こういう事態に対処できるようにしてから、保有の促進をするのが、まともな施策の進め方というものだが、マイナンバーカードの導入ありきで話を強硬に進めている現政権は何かがおかしい。

 現状でも入力ミスによる誤作動や顔認証などシステム全般による不全が相次いでいるが、これだけならまだしも、政府の責任体制は非常に危うい。デジタル庁はマイナポータル利用規約23条「免責事項」で「デジタル庁は、本システムの利用及び利用できないことによりシステム利用者または他の第三者が被った損害について一切の責任を負わないものとする」と明記している。異次元+驚異の無責任体制である。

 こうまでして進める狙いは何であるか? それは、プログラム開発利権、保険証と一体化することによる病院等への読み取り機等の機器の導入利権、マイナンバーカード利用により得られたビッグデータの使用権販売利権などが想定される。

 特にビッグテータを扱いたいのは、GAFAM(グーグル、アップル、フェースブック、アマゾン、マイクロソフト)あたりではなかろうか? 日本の企業よりもGAFAMとかの方が、ビッグデータ利用のテクニックは長けているように思われる。利用利権の見返りは、相当大きいのではないだろうか?

 マイナンバーカード問題はしっかり議論しなければならない。