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鉄道会社の「乗れない話」に気を付けろ

おかぼん

 年初に「輸送機関は快適を積み残すな」で、3月のダイヤ改正について書いたが、実際に改正されてその後はどういう状況か。

 私が利用している常磐線快速電車は20%減便したが、今のところ大きな混雑はなく推移している。ただ明らかに混雑度が増した。民間企業なので赤字だから、と言えばそれまでだが、テレワークや時差出勤の協力要請をしながら、一方で減便というのはやはりおかしい。

 これはJR日光線の話だが、3月のダイヤ改正で車両編成が4両から3両に減両。鹿沼駅では午前7時台に3本あった宇都宮行が2本に減った結果、満員で乗車を諦める人もいたという。これに対するJRの見解は「全く乗れないほど混んではいない」である。結局、積み残しが常態化しない限りは増便増両しないというのが、コロナ禍の状況下であってもJRの本音なのかもしれない。

 そのような中、JRをはじめとする鉄道会社は、近い将来運賃の値上げに踏み切る見込みだ。本体の運賃値上げだけでなく、バリアフリー化の運賃上乗せなど手法はさまざまだが、来年以降一斉に運賃は引き上げられそうな気配である。

 また一方で回数券の廃止の動きも加速されそうだ。3月にJR東海の新幹線回数券が一部を除き廃止されたのも衝撃的だったが、JR東日本では10月より普通回数券の発売を取り止めるという。すでにJR西日本のICOCA区間でも廃止されており、この動きは今後拡がっていく可能性が高い。

 JR東日本では回数券の代替として、Suicaで1か月に10回以上同一運賃区間を乗車すればポイントで還元する制度も設けるようだが、回数券は3か月で10回利用すれば元を取れるのに対し明らかなサービス低下であるし、何と言ってもSuicaでは振替乗車ができないのが致命的である。

 あってはならないことだが、首都圏では毎日のように人身事故が発生し、振替乗車のお世話になることが日常茶飯事である。しかし、IC乗車券は目的地までの運賃を前払いしていないので、定期券のように表面印字されていない限り振替乗車の恩恵にはあずかれない。

 制度変更にはメリットと同時にデメリットも伴う。消費者はより一層勉強する必要があるし、鉄道会社にもさらなる丁寧な説明をお願いしたい。