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デジタルって、わかってる?

おかぼん

 警視庁はこの7月から警察署での手数料などの支払いにキャッシュレス決済を導入した。それはそれで大いに結構なことではあるが、車庫証明などの手続業務で頻繁に利用する立場の者としてはそれ以前にもっとやるべきことがあるだろうと言いたい。

 そもそも警察署では手続窓口と手数料支払窓口が別である。そのため、書類に不備がなく手続がほぼ完了した時点で書類を持って会計窓口に出向き、そこで支払いを済ませもう一度手続窓口へ戻ってようやく手続完了となる。会計窓口は同じフロアにあることが多いが、警察署によってはエレベータで別の階へ行かなければならないことも珍しくはない。

 仕事の仕方を全く変えずに支払だけをただキャッシュレス化しようというのは感心できない。それでもまだ警視庁は進んでいる方で、神奈川県警や千葉県警などでは会計窓口で証紙を購入しそれを申請書類に貼付する必要がある。もっとも業務で頻繁に利用する立場から言えば、こちらは事前に一括購入しておけば、その都度手続窓口と会計窓口を往復する手間は省ける。

 この、窓口が別であるための弊害は手間だけではなく、締切時間が近くなって手続に時間がかかると会計窓口が閉まってしまうことである。さすがに会計窓口を閉ざされて手続が完了しなかった経験はないが、もう少し早く窓口に来るよう指導されることもあるし、警察署によっては締切時間を15分早めているところもある。ホームページ等で案内の締切時間と齟齬が生じていることはいうまでもない。

 ではこのキャッシュレス決済で業務がスムースになったかというと必ずしもそうではない。例えば、500円の手数料を支払う書類を10枚持って会計窓口へ行くと、以前は5千円と引き換えに書類に領収印を押すだけで完了した。しかしこのキャッシュレス決済は書類1枚ごとに対応するため、現金支払いの場合、5千円を機械へ入れると4500円の釣り銭とともにレシートが2枚出てくる。それを署員が書類に2個所ホッチキス止めして一つの処理完了となる。それを延々10回繰り返すのである。さらに出てくるのがレシートのため、領収書が必要な場合は申し出により取り替えるという。さすがにこれは数日前に最初から領収書が出てくるようになった。

 そもそも市役所などで住民票発行の手数料などはその手続窓口で支払って完了である。なぜそれが警察署ではできないのだろうか。

 と、ここまで書いて思った。そもそも車庫証明や住民票発行に窓口に赴いて手続きする必要があるのだろうか。デジタル化の道はまだまだ長い。