月刊ライフビジョン | 社労士の目から

本家を批判する日本共産党

石山浩一

 文芸春秋6月号で日本共産党の志位委員長が、尖閣諸島での中国海警局領海侵犯に対して非難の談話を発表している。その内容は執拗な領海侵犯の撤廃を求めるというものである。同じ共産主義であり日本共産党の本家ともいえる中国を批判する狙いはどこにあるのか。

“領海侵犯は国際法で解決すべき”

 経済成長著しい中国経済は、2020年第4四半期のGDP成長率は前年同期比6.5%増だった。新型ウイルス対策で厳格な措置が取られ、緊急の経済対策も実施されたことで、中国の経済はゆっくりと回復している。2020年には、中国は主要国の中で唯一、経済成長を記録した。隣国であり世界経済第2位の中国の存在は、日本のみならず世界にとっても注目の的である。その中国に対して日本共産党の志位委員長は次のような批判を行っている。

 「力による現状変更を強める中国に対し日本共産党は『覇権主義的行動』と強く批判してきた。今回の中国海警法の施行は、法制的にもこれをエスカレートさせるものです。中国の問題点に対応する上で日本共産党が何よりも重視しているのは、国際法に基づく批判です。これはわが党が中国共産党と長年にわたって向き合う中から体験的に導き出した方法論でもあります。国際法に基づいた冷静な論理によって問題点を明らかにされることが中国の政権党は一番痛いのです。しかし、こうした論理の組み立てを、日本政府はもちろんアメリカ政府もしていません。ともあれ、海警法は国連海洋法条約をはじめとした国際法に明白に違反しており、ここを理詰めで徹底的に批判し、国際社会に発信することが重要です」としている。中国海警法などの他国間に関する問題は、国際法に基づいて解決すべきとしているのである。

 また中国は何世紀も前から領有権があると主張する南シナ海の南沙諸島で人工島を建設しているが、これに対しブルネイやマレーシア、フィリッピン、台湾、ベトナムは反発している。尖閣諸島への侵入は日本共産党の指摘通り海警法同様に、国際海洋裁判所等に提訴して解決すべきである。

“自国オンリーでない「一帯一路」を”

 近年中国が力を入れているのが一帯一路政策である。中国の習近平国家主席が2013年に提唱したシルクロード経済圏構想で、かつて中国と欧州を結んだシルクロードを模し、中央アジア経由の陸路「シルクロード経済ベルト」(一帯)とインド洋経由の海路「21世紀海上シルクロード」(一路)で、鉄道や港湾などインフラの整備を進める構想となっている。途上国は中国の協力で自国の経済発展が促されると期待し、先進国企業のプロジェクト参入を狙っての計画である。中国の覇権主義だと懸念する声もあり、各国間で温度差も生じている。日本としては2017年6月に協力姿勢を表明しているが、特に日中両国の弱点である石油の安定確保などの効果に期待をしているようだ。壮大な石油パイプラインによる石油供給構想もあり、関係国との協調が必要となる。

 私有財産制を否定し、生産手段・生産物などすべての財産を共有して貧富の差をなくすという社会の実現を目指すのが共産主義である。政治や経済体制の異なる国との関係を力でコントロールするのではなく、国際的なルールに基づくべきという日本共産党の指摘は正鵠を射ており日本の対応も注目される。


石山浩一
特定社会保険労務士。ライフビジョン学会代表。20年間に及ぶ労働組合専従の経験を生かし、経営者と従業員の橋渡しを目指す。   http://wwwc.dcns.ne.jp/~stone3/