月刊ライフビジョン | ビジネスフロント

ニッポンの夜の過ごし方

音無祐作

 訪日外国人の増加が続いている。今年9月には前年同月比18.9%増の228万人が訪日し、4~9月では、以前政府が建てた年間目標の2,000万人をすでに超える2,120万人が訪れているとのことである。
 英語もあまり通じず、通貨や物価もあまり安いわけではないのに、なぜそれほど増加するのか私にはあまり理解できないが、もしかしたら言葉があまり通じない未開の地というような感覚がかえって冒険心をくすぐったりしているのだろうか?

 アベノミクスの名のもとにひたすら経済成長を追い求める日本政府としては、観光産業を大きな柱としており、GDPへの波及効果は6%を超えるといわれている。
 当初政府は、2020年の訪日外国人客数を2,000万人とする目標を立てていたのだが、既にこれを上回っている実績を踏まえ、目標を4,000万人に倍増した。2020年といえば、オリンピック・パラリンピックという大イベントがあるので、それだけでもかなりの訪日外国人数が見込めるであろうが、それまでに増加したホテルなどのサービス施設が潤い続けるだけの観光客が2020年以降も続くのか不安を感じてしまう。

 一方、日本に訪れる外国人の不満としては、先ほどの言語の他に日本における夜の行動に制限があることが大きいらしい。
 いわく、ニューヨークやロンドンなどの都市では、パブやクラブだけでなく、劇場など夜通し遊べる施設が充実し、交通も対応しているが、日本では東京などの大都市ですら夜間の遊興施設も少なく、交通も終電が早く不便だし、ましてや地方では夜は宿で寝るしかないのが不満だとのことである。

 そういった不満の声を受け、2020年までに日本でもナイトタイムの充実を図り、さらなる経済効果を目指そうとする動きが盛んになってきているらしい。
 日本には古くから「お客様は神様です」の精神があるからなのか、客の不満を吸い上げることも大事かもしれないが、演歌の大御所に「エグザイル歌って」と客がリクエストしても応えちゃくれないように、何でもかんでもいうことを聞くのがおもてなしでは無いように思う。

 ナイトタイムの対応のみならず、民泊、シェアライド、そしてカジノなど、海外にはあるのに日本では無い、あるいは充実していないから問題だと、法整備や規制緩和を求める論調を耳にする。

 しかし、日本には日本の事情もあり、ナイトタイムへの対応一つとっても、環境、エネルギー、治安や労働力不足の問題など課題は山積している。
 リクエストにこたえるばかりではなく、「日本に来たのなら、こういう風に楽しんだらいかがでしょう」といった具合に独自の魅力を打ち出した提案を考えるのも大切なおもてなしではないだろうか。