論 考

自民党は下野すべき

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 衆院3補選の結末は絵に描いたようにすっきりしたもので、四の五の理屈はいらない。

 今回の選挙で見落としたくないのは、東京15区における右翼政党のドタバタ選挙戦である。小政党が、維新が占めようとした位置をさらに右へ寄せて存在感を示そうとした。おかげで維新は大政党と小政党の双方から挟み撃ちで従来の位置づけがかすんだ。

 維新は大政党のポーズをとって、野党第一党の座をねらうはずであった。その戦術は、自民党よりもさらに右翼層の支持を狙っていたが、あまり極端な主張もできず、もたついた隙間を右翼小政党がかっさらった。

 これは、基本的には選挙戦略の失敗だが、もともと維新の立ち位置が定まらず、いわば選挙でおいしいところを摘まむ作戦であって、安定した政党としての性格が明確ではない。

 このところミニ右翼政党が輩出するのは、長く続いた安倍政治の性質から来ている。安倍氏は超右翼人士であったが、自民党全体のリベラル度合いを破壊するまではやれなかった。

 おまけに、統一教会問題や、安倍派の露骨な裏金事件が露見して、みごとに失速した。右翼政党は、いわゆる安倍的なものの遺産が引き継がれたとみられる。

 政治というものは、政治家がどんな思想をもっているにせよ、開かれた話し合いで、1つひとつ解を求める。その際、論理的に整理できないことは解を求めたことにならない。ところが、安倍政治は、数で押しまくった。

 誰がみてもスキャンダルまみれの安倍氏が、8年間も政権を維持したことは、粗忽ものたちが、安倍右翼思想が支持されたと思う雰囲気を作り出したのであろう。

 しかも、国際政治において自民党政権は、民主主義を率先して取り組んでいるかのようなポーズを取り続けた。実際はなんでもあり、ごった煮的政治を生み出したのである。

 株さえ上がれば景気がよいとみて、人々の支持が得られる。安倍氏は黒田日銀ともども国債を無制限に発行し続けた結果、どうしようもない円安を招いた。

 裏金政治の審判が出されたのと時を同じくして、海外為替市場で1ドル160円台に駆け上がり、乱高下した。安倍政治の巨大なツケが暴れ始めたというべきだ。自民党はいさぎよく下野するのが民主政治の建前である。