論 考

ムラへの忖度か?

筆者 斉藤和吉(さいとう・かずよし)

 人工知能AIが、身近になってきているというが、私自身はあまり実感がない。

 実はこれもAIのおかげだと教えられてわかったが、今のところ、車両の衝突被害軽減ブレーキ以外に身近で役に立っていると思えるものは、あまり考えつかない。知らないだけで、至る所に浸透しているのだろうか。

 とはいえ、これからの時代にはとても重要となってくる技術らしく、日本国内での研究開発はもちろん、海外先端企業からのデータセンター投資の話など、AIの話題はかまびすしい。

 とくに海外からの投資の話などは、ほとんどのメディアで、日本経済にとっての明るいニュースとして報じられており、岸田首相の外遊の大きな成果のひとつだとする声も聞こえてくる。

 ところが、このAIデータセンターなるもの、必要な電力が半端じゃなく大きいらしい。この数年のAIの台頭で増加した全世界での電力消費量は、ちょっとしたレベルの国家の消費電力に相当するという。

 たとえば、OpenAI社のGPT-3の消費電力量は1287MWhで、原発1基分1時間分の電力1000MWhを上回る。アメリカの平均家庭の電力消費量は29KWh/日で、ChatGPTは17000世帯分に相当するというデータもある。

 最近人気が停滞しているが、電気自動車やプラグインハイブリッド車が増えてくれば、それらへの充電にもますます電力が必要となってくる。

 残念なことに、日本では、再生可能エネルギーの活用が、欧州ほどは進んでいない。主な発電を火力に頼り続けていることなどから、「化石賞」なる不名誉な賞まで、連続受賞をし続けている。

 このまま消費電力の増加を野放し続ければ、いずれ総需給に問題が出るであろうことは、当然政府にも予想はできていることだと思う。

 にもかかわらず、放置し続けている思惑の裏には、「ほら、やっぱり原発がもっと必要でしょう」と、いう雰囲気に持っていくための布石のように感じられるのは、私だけであろうか。