論 考

日本の誤った歩み

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 タイでは、学生が選択する第二外国語は、中国が34.8%、韓国が17.6%、続いて日本が17.2%になった。最近、韓国が上位に出た。

 タイの人々は国外に仕事を求める事例が多い。人気がそのまま反映されている。いわば、各国の勢いそのものでもある。

 かつて、日本は、――資源がない、エネルギーがない、土地がない。しかし、人が多い。人こそ最大の資源であり、工夫し奮闘すればいくらでも発展できるのだから、おおいに人材を活用しようといった。

 しかし、現実はまったく違う。とくに、1990年代からは、産業界はコスト抑制絶対主義に走り、人材開発・活用などは絵空事になった。

 女性差別が内外に問題視されると、均等法が採用されたが、中身は総合職と一般職にわけ、さらにその延長に非正規労働を流行らせた。なにがなんでも、コストを抑えればいという発想から、企業の活力が盛んになるわけはない。

 いま、なにを騒動しているか! 人口減で、このままでは2100年には、6300万人程度になるという人口問題研究所のデータに慌てている。人がいても活用する気がなく、まさに無駄遣いを繰り返してきた。

 シンガポールはこの半世紀に、人口200万人が600万人近くへ増えた。人口が増えたのは、海外からの人材を積極的に受け入れたからである。国内の人材にも海外から人材にも手厚い待遇を惜しまなかった。経済的にも赫々たる成果を上げているのは誰もが知っている。

 日本経済の斜陽化はこれからもどんどん進むだろう。政財官に優秀な人材がたくさんおられるとしても、一騎当千、その他大勢黙ってついてくればよろしいとはいかない。

 会社で人を採用するのは、手足を求めるのではない。人材、すなわち頭をこそ求めているのである。

 人間を大事にしない社会に未来があるとは思えない。