論 考

おもてなし

 ハワイのラハイナの町がまる焼けになった。

 そこから48キロメートル離れたワイレアビーチは高級ホテルが並んでいる。火災発生後当局の呼びかけで5万人近くがマウイ島を離れたが、数千人が残っているそうだ。ワイレアビーチでは観光客がゆったり楽しんでいる。

 この状態を非難する声もある。島の収入の80%は観光客依存で、島民の働き場所も当然ながら観光産業がほとんどだ。

 日本では、大災害の場合は自粛ムードが支配する。わたしは、兵庫県南部地震後も、東日本大震災後も、自粛反対で、被災地以外は被災地の分までがんばる気持ちでやろうと提唱し続けてきた。

 人々の生活に密着した産業には誰も自粛してほしいと思わないが、派手な観光産業では、どうしても非難の矛先が向きやすい。

 マウイ島の再建を考えると、観光客が離れてしまうのは致命的だ。観光客も、おカネを落とすからというだけでは上等な気分になるまい。

 観光立国という言葉は調子がよいが、マウイ島の悩みを考えるのも大切だと思う。それでも、おもてなしこそ大事――が実践できるか?