論 考

民主便乗派!

 16日社説は、「民主主義を揺るがす暴挙」(朝日)、「言論への暴力は断じて許せぬ」(読売)、「言論封じる暴力許されぬ」(毎日)――暴力、テロ行為を許さないのが社会通念である。まして言論で活動する政治家を暴力で妨害するなど言語道断だから、紋切型、定番型となるのは当然でもある。

 しかし、社会的衝撃に便乗したみたいでは芸がない。

 民主主義を揺るがす暴挙は、暴力だけではない。絶え間なく数の力を使って、好き放題やっている与党の行動を忘れるわけにはいかない。はたまた言論への暴力では、言論による暴力もある。

 まことに遺憾なのは、筒状爆弾が投じられたことによって、一時的にせよ数の暴力や、言論の暴力が風呂敷に包まれて忘れられてしまうことだ。

 すなわち、暴力に対して民主主義を守れという声に、(暴力は使わないとしても)民主主義を本気で守っていない連中が便乗している。

 24歳の青年の行動が、私憤なのか公憤なのかはわからないが、彼の行為によって、一時的にせよ、人々の正しい批判の目が曇りかねない。なによりも、社説の一本調子がその見本だ。

 また、警備の万全を主張する声に短絡するのも、過剰警備社会へ進むのは歓迎できない。

 世界は暴力の蔓延である。戦争は暴力ではないのか。国家の名において展開される暴力が、人々の健全な精神を麻痺させている。これも、各新聞の社説子にはよくよくお考えいただきたい。