論 考

少子化の一面、無思考化

 人口が社会に与える影響はきわめて大きい。昨年の出生数が80万人割れで、少子化に歯止めがかからない。社会の危機だと騒動するのもわかる。

 対策の方向性としては、人口を減らさない、もしくは増やすという前提と、少子化・人口減を与件とする前提と、分別すれば2通りの選択肢がある。

 この2通りについての比較検討がおこなわれていない。とくに、少子化。人口減を与件とした研究・検討が不十分である。

 都内をタクシーで走ると、1970、80年代の大混雑ぶりを思い出す。道路が混雑するほど経済活況ではあろうが、目に見えない遺失利益も大きい。精神的苛々など尋常ではなかった。

 少子化解決をマクロで考える際、ただちに現在の経済・生活モデルを前提にして、おカネの話に短絡するので、新しい視点や、いい知恵が出る可能性が低い。

 実は、1980年代後半から、少子化について、かなり社会的に討論していたのだが、当時は政治・経済を含めたところまではいかず、中途半端な文化論(?)で終わってしまった。

 このテーマなど、たとえば、学術会議中心に展開するにふさわしいと思うのであるが——まあ、政治に科学的見識なく、文化論とくれば古色蒼然なものが顔をだすような始末だから、結局、おカネバラマキ路線になってしまう。