論 考

世界の良識が問われる

 プーチンは、ソ連解体によって、ワルシャワ条約機構を解体したのに、アメリカがNATOの強化を図ってきたことに不満である。ロシアが敵視されることに異議申し立てをした。

 異議申し立ての方法が野蛮極まりない。いわば第一次世界大戦以前の戦争論を活用した。

 その結果は、戦争そのものの物理的側面では戦果を挙げたように見えるが、長期的に、ロシアの国際的信用を失い、国民生活も不都合な方向へ傾斜して、戦争の戦略目的ではきっちり敗北している。

 カーライル(1795~1881)が、英国の同胞に対して、「諸君はインド帝国とシェークスピアのいずれを手放す気か。インドはいつかは失われるが、シェークスピアは失われることはない」と語った。1840年のことである。

 プーチンは、大ロシア、芸術家に誇りを持っているようだが、トルストイにせよ、ドストエフスキーにせよ、チャイコフスキーにせよ、世界中に愛されている偉大な芸術家を生み出した国柄に、自分で泥を塗ってしまった。

 日本では、猫に小判という俗諺がある。プーチンに芸術と置き換えられる。

 良識ある世界が、野蛮人プーチンとともに、歴史を逆進してはならない。