論 考

連合は、大衆運動の性根を再興せよ

 アメリカの労働組合は1980年には組織率20%だったが、いまは10.3%である。組織率減少の原因は、個人主義の強いアメリカ人気質もあるし、国民一般の組合支持率が下がっていた。

 もちろん、経営側の猛烈な組合不要論宣伝が奏功していた。ここへきて、国民の組合支持率は68%に上昇している。

 最近の大きな話題は、巨大アマゾンが鉄壁の組合結成阻止を図っていたなかで、労働者が1つの物流センターで組織化に成功したことだ。

 もともとアメリカの労働組合は、賃金に関心が高く、賃金が高いとみれば、戦闘力を失う傾向にあった。アマゾンの場合は、猛烈に過酷な労働だ。チャップリン描く『モダンタイムス』の上を行く過酷な労働に、労働者がついに立ち上がった。

 過酷な労働を続けさせていたのは、経営側が、AWSパノラマなる工場内監視システムを導入して、労働者が三々五々集まる様子にも神経を使っていた。この非情な管理体制を破ったのは、外部からの組合オルグではなく、従業員たる労働者が腹に据えかねたことだ。

 自分がいかにして働いているのか。これでは、ロボットではないか。人間的らしく働きたいという自尊心の発揮である。

 さて、わが国の組合も一考の価値がある。おおかたの組合員は経営管理システムのなかで、自分の働き方を真剣に考えているだろうか。連合が、自民党への接近をする。それ自体が悪いとは言わない。理解者を獲得していくのは有意義だ。

 ただし、連合を構成する各組合が生き生きとした活動をしていない現状において、国レベルの政策において手柄を立てようとしても、性根が入らない。

 だいたい政府・与党の労働対策は、せいぜいトリクルダウンであって、働く人の視線に基づいた国造りをする気はない。

 与党の懐に入って政策を実現するという方法もあるが、連合の力はどこまでいっても、組合員力である。いまさら、連合会長に労働運動のイロハのイを語るのは失礼だとは思うが、心配を払拭できないので、あえて、一言書いておく。