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就活経験の果実はきっとその手に

渡邊隆之

 コロナウイルスによる自粛要請が続いている。本来ならばこの時期は、学生たちが就職活動で忙しい時期…のはずであった。例年だと、電車内で背広姿も初々しい就活生の姿をお見掛けした。少し緊張した面持ちでメモやスマホを確認し、時折溜息をつく様子に、思わず「頑張れよ」と声を掛けたくなる風景であった。

 しかし今年は様変わりしている。緊急事態宣言で就職説明会も相次いで中止。ネットを利用しての入社面接なども出てきている。幸先よく企業から就職内定をもらっても、コロナ騒動の影響で内定が取消しになったり、または入社がまだなのにパワハラを受けたり。公務員試験や国家試験も実施が延期になるなどで、民間企業に進まない方たちにとっても神経質な日々が続いている。しかしそうまでしてやっと入った会社でも、「やれやれひと安心」とならないのが厄介なところだ。

 『七五三』の言葉が登場して久しい。新卒3年以内の離職率が中卒7割、高卒5割、大卒3割という現象のことである。今はインターネットで在籍社員のクチコミなどから会社の状況もある程度把握できるので、人の入れ替わりはもっと激しいかもしれない。経団連会長も「終身雇用の維持は難しい」と発言するご時世である。世の中のインフラの変化も激しいし、サービスへのニーズも常に変化している。入社時の会社の方針も社長や役員が変わればがらりと変わる。

 一定程度の収入を得たいという就活生の気持ちもわからないではないが、「自分が何をしたいのか」「その仕事をしていて本当に楽しいのか」の方が、ひとつの仕事に長く居続けるヒントになるのではと筆者は感じる。

 数年前、仕事の関係から音楽著作権の講義に触れる機会があった。電車の遅れで少し遅刻し恐る恐る教室に入ると、その講師の顔にはどこか見覚えがある。高校時代の同級生だった。

 学生時代の彼は、クラシック音楽がとても好きで、家に遊びに来たときにも曲の説明などをしてくれていた。今は、著作権者に代わり著作権使用料の徴収のお手伝いをし、権利者の新たな創作を支援する部署にいるのだそうだ。卒業後20年以上も会っていなかったので、お互い髪に白いものが目立つ年齢になっていたが、学生時代の記憶は色褪せず、少しの時間を楽しんだ。

 筆者は卒業時から希望の職種に就くことができず、興味のない仕事を任せられ、随分と上司に怒られもした。当時は「こんな仕事、はたして意味があるのだろうか」などと疑問視もしていた。

 しかし、その疑問視していた仕事のひとつ、「プログラミング」がいよいよ小学校の教科に加えられることになる。また、スーパーの裏側のヒト・モノの動き、売場での接客業務を経験したことで、他人の気持ちを少しは感じ取れるようになった。お世話になった会社には大変感謝している。現在は当初の希望に少し近い仕事に就いているが、これらの経験はプラスに働いている。

 「一生」の言葉通り、人は1度しか生きられない。これからの世代には悔いのない選択をしてもらいたいし、筆者も悔いのない選択をするつもりでいる。

 さて、今回のコロナ騒動で政治家や官僚の上層部の判断がいかに頓珍漢で、国民目線から外れているのかがはっきりした。即刻選挙で刷新したいところだが、有権者はその機会が得られない。いまは、SNSなどで個人が意見表明できるので、全体の政治や経済にもっと興味を注いで、快適なインフラ作りに力を合わせていきたいと思っている。