論 考

校正の精神

 本や新聞などの編集で地味だが絶対不可欠の作業が校正である。

 かつて8年間担当した季刊雑誌の最後の本を作成してから40年になる。時折調べものの必要から目を通すことがあるが、内容が古くなっていなくて役立つのは密やかな誇りである。

 一方、なかなかいい原稿だと喜んでいるのに、誤字を発見するとおおいなる落胆に見舞われる。当時は活版である。寄稿してもらった原稿をリライトし、割り付けして、さらに校正まで1人でやる。生来の粗忽でもあるから、重々注意しているつもりなのだが、完全無欠なものができない。はやる気持ちを押さえて、1字ずつ見ていくのであるが、ついつい読んでしまって、そのドジをいまごろになって発見するわけだ。

 医療体制の崩壊を防ぐという大義名分を前提としてウイルス対策をやってきたが、ここへきて、医療現場から検査体制をきちんとせよという声が上がり始めた。最前線で奮闘する医師・看護師の個人用防護装備が間に合わないという悲鳴が上がっている。

 きちんと計画して、実践して、点検するPDCの流れは、すでに古代ギリシャ時代からある考え方である。予想もしなかった事態にぶつかって政治家や行政機関があたふたするのは仕方がないが、1つひとつの仕事をきちんと丁寧に押さえていく心がけが大事だ。