論 考

イギリスの誤算

2016年の国民投票で僅差でのEU離脱が決まったとき、イギリス政府は比較的容易に離脱できると考えていたみたいである。

 当時、話題になっていたのは「手切れ金」の金額で、あたかもこれをいかに引き下げるかに関心が強かった。当時、アイルランド問題についての深刻な記事はなかった。いまにして思えば、これは大きな誤算であった。

 英国保守党議員の離脱強硬派は、古き良き時代の大英帝国がいつも頭にあるようだ。それは甘く見ても100年前には存在しなかった。現実に存在していないものに過大なロマン(行動のエネルギー)を求めるのだから、ますます現実離れしていくという心理的罠にはまったのではないか。

 また、自分たちがEUの結束に背中を向けているのだから、EUの結束強さがわからない。仮に1国同士であればイギリス流を押し通せるとしても、EUとして結束している相手は予想以上に手強い要塞であった。

 EUは離脱交渉の初めから今日まで、まさに一糸乱れず、交渉の路線は全く揺らいでいない。しかも、現実に、もめているのはイギリス内部であって、EU側ではない。

 イギリス下院総選挙で保守党が圧勝するしかEU離脱はない。この間、イギリス国民の話題はつねにBrexit問題であった。総選挙は、実質的に、EU離脱するか否かの国民投票の様相を呈するだろう。