論 考

行き詰る英国のEU離脱

 イギリス国民が僅差でEU離脱を決めたのが2016年6月23日。

 メイ首相が17年6月8日総選挙に勝利して一挙ハード・ブレグジット路線に出ようとしたが、選挙戦は敗北。保守党が330議席から318議席へ減り、労働党は229議席から262議席へ伸ばした。

 議会はハングパーラメント(保革伯仲)となった。この選挙で国民が期待したのはEU離脱問題よりも内政改革だとみられた。

 その結果、EU離脱はますます複雑となって、議会はブレグジットに縛られ動きが取られなくなった。メイ首相は「ゾンビ政府」と悪口を言われても粘りに粘ったが降板、ジョンソン首相の登板となった。

 ジョンソン氏が解散総選挙にこだわるのは、「骨董品」と悪口を叩かれる労働党コービン氏の不人気にあやかって、保守党の党勢を回復することと、EU離脱を時間切れハード・ブレグジットで突っ走ろうという作戦だろう。

 しかし、EU離脱に関しては、EU側が嘆くように、「どんな選択肢にも過半数の支持がない」のが英国内事情である。

 また、仮に総選挙が実現しても、ジョンソン氏が期待するような保守党の党勢回復が実現するかどうか。「ゾンビ政府」を脱出できる保証はない。

 総選挙となれば、国民はEU離脱と内政問題の両方で投票先を考えねばならない。とすれば、またまた国民的選択は理解できないものになるかもしれない。

 とすれば、理屈上は、EU離脱に関して、再度国民投票にかけるのがすっきりする。その際、「合意なし離脱」反対の国民は「離脱反対」で投票することになる。つまり、ハード・ブレグジットでいくかどうかを問うべきである。

 しかし、これはEU側が賛成するかどうかが関わる。

 どう見ても、ジョンソン政権は追い込まれている。「やけくそブレグジット」にするのであろうか?