論 考

亡国の兆し!

 ひさしぶりに『魯迅選集』をかたっぱしから読む。

 中国では、辛亥革命で1912年に孫文(1866~1925)を臨時大統領として共和制を宣言し中華民国を成立させた。

 これがそのまま順調に育てば、1789年のフランス革命に続く世界的な大革命として歴史に刻まれたはずだ。しかし、袁世凱(1859~1916)・蒋介石(1887~1975)のごとき旧勢力軍閥が暴れまわって、偉業をしっかりと打ち立てられなかった。

 魯迅(1881~1936)は、「満州朝廷(清)を倒すのは割にやさしくできたが、次の改革は国民が自分で自分の悪い根性を改革することなので尻込みはじめた」と書き残した。

 次の改革とは、共和制すなわちデモクラシーを培養し育てることである。旧来の思想・習慣に対する戦いは、1人ひとりの精神革命である。自分が自分を革命する、これぞ「人つくり革命」である。

 わが国は戦後にデモクラシーになった。「なった」のであって「した」のではない。これは、極めて重たい歴史的事実である。

 魯迅は、「国が滅びそうになったときには国粋主義者が必ずたくさん出る」とも書いた。

 いまの日本は、怪しげな国粋主義者が大きな顔をしている。これが意味するのは、どう考えても、国が後退しているという証のみたいではないか。忙しい日々ではあろうが、わがこととして時代を考えてみたい。