論 考

遺産が意味する遺産

 ノートルダム寺院の火災は、15日夕刻に発生して、9時間後の16日未明に鎮火された。上空から放水すれば建物全体に大きな負荷がかかりダメージが大きくなるから、慎重に下から放水した。尖塔と屋根が焼けて崩落したが、見事なプロの仕事であった。

 ノートルダム寺院の建設は1163年に開始し、1182年には主要部分が建築された。

 1181年が第1回十字軍遠征であり、法王インノケンティウス3世(在位1198~1216)の時代がカトリック教会、法王権の絶頂であったから、当時も財政的に潤沢で人々の信仰心が旺盛だったのであろう。

 1232年には異端審問制度が確立した。いわばカトリック教会の専断がまかり通るようになる。

 1380年に、初めて聖書が英訳された。これは民衆の信仰を拡大するために非常に意義があった。しかし、そのころは教会内の権力抗争が激しくなった。

 教会の放漫経営と堕落を批判して、ボヘミアのフスが立ち上がったが、1415年に焚刑に処される。1431年、ジャンヌ・ダルクが焚刑に処された。

 1513年には、教会経営の資金不足を補おうとして、法王レオ10世が免罪符販売を始めた。怒り頂点に達してルターが立ち上がったのが1517年、そこから宗教改革の長く過酷な戦いが始まった。