論 考

出発点に戻るべきではないか!

 13日英下院でのメイ首相は、ガラガラにかすれた声で「それでも申し上げますが——イギリスが直面している問題は変わらない」と強調した。下院は、それでも、政府(EUとの協定)案を否決した。

 次の提案は「20日までに議会が協定案を承認しない場合、6月30日を期限とする離脱延長を求める」という。

 5月23日から26日は欧州議会選挙である。選挙後の初議会は7月2日である。イギリスがEU離脱の路線で進むならば、議会選挙には参加しない。そうすると、新議会にはイギリス選出議員はゼロである。そこで6月30日が打ち出されたのだろう。

 議員が示しているのは「合意なしEU離脱を求めない」ことにある。なんとなれば、当面の混乱はもちろん、諸外国企業のイギリス離れが懸念されるし、ポンドも下落するだろう。ソフトランディングしたいわけだ。

 さらに、ここまできて、「いったいEU離脱の意義があるのか」という基本的な問題に直面している。

 EU側は、――もはや、これ以上は何もできない。延期するには、それなりに正当な理由が必要で、かつ、事態収拾への道筋が明確でなければならない――というあたりがポイントであろう。

 とすれば、「見えざる手」が誘導するのは、再度の国民投票による仕切り直しみたいである。