論 考

安定感なき安倍外交

 外交における要諦は「確固不動の精神」である。すべての責任は政府にある。これは、外交官として活躍したカリエール(1645~1717 仏)『外交談判法』(1716)の核心だ。

 彼が活躍した時代は、ルイ14世(在1643~1715)統治期で、絶対王政の最盛期であり、フランスはたびたび侵略戦争を展開した。

 欧州全体でみると、各国が対立抗争しつつ共存していた。どこかの国で何かが発生すると、他国に必ず動揺が及ぶ時代でもあった。

 単純に力で相手を圧倒できない国同士は、合従連衡を繰り返し、利害調整をおさおさ怠らないようにしなければならない。

 そのような外交を長年にわたって体験したカリエールは、「嘘をつかない」という単純だが容易に貫きにくい態度を堅持して、他国外交官の信頼を得た。

 嘘といえば、黒を白と言いくるめるように思うが、それだけではない。半端な発言や態度をとれば、仮にそれが善意であったとしても、相手にすれば嘘をつかれたのと同じ結果を招く。

 それから300年を経たが、国家間の有益な関係を維持するための外交の精神は普遍である。政府の対ロシア交渉においてももちろん同じだ。

 外交の基本的立場について、双方がお互いの立場をきちんと確認しておかねばならない。

 4島だ、2島だと、国内政治的な! 右往左往をするようでは、相手に足元を見透かされるだけに留まらず、両国関係の安定維持にもよろしくない。