論 考

商業精神

 カント(1724~1804)の『永遠平和のために』(1795)は、永遠平和が実現可能だという論拠を論証するために書かれた。

 そのなかに、「商業精神は戦争と両立できない」という記述がある。

 スーパーで働く人が「お客さんを喜ばせるにはどうするか」をいつも考えると語る。これは、そのままカントの理論と重なる。

 商売はコミュニケーションである。売り手と買い手は立場が異なる。一方は少しでも高く売りたい、また一方は少しでも安く買いたい。

 つまり売り手(定立)と買い手(反定立)は、対立と矛盾を抱えているのだが、より高い段階(総合)の認識に至って合意する。

 商売関係でいえば、売り手も買い手も「ありがとう」という関係に至る。

 ちょうど1年前、わたしは、100人インタビューを始めた。スーパーで働く方々が、「お客さんを喜ばせるにはどうするか」を研究すると話されたのを聞いてとても嬉しかった。

 米ロが中距離核戦力全廃条約INFの停止に走った。問題の本質は、米ロの権力者(他にも掃いて捨てねばならない連中は多い)が、戦争を商売にしていることにある。

 戦争を商売にするような政治家に、「軍縮」を説いても通じない。このような考え方しかできない政治家を、政治の舞台から排除していかねばならない。