論 考

環境ではなく主体が問題なのだ

 外相の河野氏が11日の記者会見で、ロシアのラブロフ外相発言についてのコメントを求められたが、答えず、「次の質問どうぞ」と発言した。

 続く別の2人の記者の質問に対しても「次の質問どうぞ」と発言。

 他の記者が「なぜ次の質問なのか」と質問したことについても「次の質問どうぞ」と発言した。要する、一切答えない意思表明を4度やった。

 なるほど、一筋縄ではいかないロシアとの交渉だから、わが手の内を明かしたくないという見方もできるが、なぜ、「四島返還という従来の考え方は変わりません」と言わなかったのか。これは何度言っても格別交渉に障害が発生するわけではない。

 つまり、そのようにコメントしなかったこと自体が、対ロシア交渉で政府内が確固たる見解を用意していないことを意味している。

 実際、対ロシア交渉についての明確な外交方針はないといわれても仕方がない。この間、2島返還論が台頭し、それがまたロシア側発言によって全面的に潰された形になっているからである。

 河野氏は「交渉に向けての環境をしっかり整える」(ためである)と語ったが、環境ではなく、外交の主体的方針を固めなければならない。