論 考

手玉に取られたトランプ

 中東ではサウジとイランが常に全面戦争の可能性を秘めて対立外交を展開している。これにイスラエルが絡んでいる。

 2015年2月に、当時の大統領オバマ氏が主導権を発揮して、対イラン和解協議推進の最中、共和党議員が議会演説に招聘したイスラエル首相のネタニヤフ氏が3月3日に議会で対イラン核協議反対の演説をぶった。

 オバマ氏のホワイトハウスは、われ関知せずで、異常な事態だった。

 同年末までに、米英仏独中ロとイランの間で、核開発施設縮小や条件付き軍事施設査察で合意協定した。イランは資産凍結など解除され、国際貿易体制へ徐々に戻ってきたのである。

 しかし、サウジは対抗して「核保有を検討する」とし、ネタニヤフ氏は「歴史的誤り」として反対論をますます先鋭化させた。

 サウジは中東におけるスンニ派の糾合に走り、敵対関係にあったイスラエルとも2014年から秘密裡の提携交渉を重ねていた。

 2016年1月13日にオバマ氏が「イランの新たな戦争を回避した」と公言したのは、まさに、綱渡りの火消作業であったといえる。

 トランプ氏は大統領就任直後に中東を歴訪し、対イラン包囲網を呼びかけるなど、着々手を打ってきた。

 対北朝鮮への妥協しないサインを送ったという手前味噌の理屈が発せられているが、むしろ、せっかく朝鮮半島で話し合い気運を作ったのに、新たに中東の火種に点火したことのほうが極めて危険である。

 トランプ氏が、サウジとイスラエルに乗せられて、「イランの新たな戦争を作った」ということになりかねない。