論 考

信頼性がどんどん劣化する

 予算委員会で、岸田政調会長が安倍氏に対して財政健全化の決意を質した。

 安倍氏は「不退転の決意でやる」と答弁した。

 さらに岸田氏が、「財政健全化の見通しがない中での財政出動は将来不安を増大させかねない」と質問すると——

 安倍氏は「歳出削減を急ぎ景気の腰折れを招いては元も子もない」と答弁した。ほんの少し前に不退転と見得を切ったのに、もう忘れている。

 現職自衛官が集団的自衛権行使は違憲だという立場から、自衛権行使の「存立事態」になっても出動命令に従う義務がないという確認を求めた裁判で、国は「存立事態の発生は想定できない」という主張を繰り返した。

 想定できるほどに切羽詰っているとして、安全保障関連法を強引に成立させたのに、今度は想定できないと正反対のことをいう。

 高裁は「安保法の成立に照らして、(国の主張は)採用できない」と蹴飛ばした。当然だ。

 政治家も官僚も、その場その時を切り抜ければよろしいという見識なのだろうが、これでは誰の信頼も得られない。酷いものだ。