論 考

啓蒙思想家

 西周(1829~1897)は、島根県津和野町に生まれた。啓蒙家、軍事家、哲学者の3分野で活躍した。

 彼が生み出した翻訳語をみると、まさに近代日本の最先端でがんばったことがよくわかる。

 Philosophyを哲学と訳したのが有名だが、他にもたくさんある。芸術、理性、科学、技術、心理学、意識、知識、概念、帰納、演繹、定義、命題、分解などである。後世代としてはずいぶんお世話になっている。

 その学風は、漢籍の素養がおおいに発揮されている。(その方法論的限界も感じる)

 社会生活をsocial life=社交と把握しているところに、西洋における自我の理解が十分進んでいなかったことがわかる。

 朝永三十郎(1871~1951)が『近世における「我」の自覚史』を発表したのは1916年である。世代としては40年後である。

 西は自由民権世代を引っ張り、朝永はいわゆる大正デモクラシー世代を引っ張った。

 社会をつくっているのは1人ひとりだという常識! は、こんにちでもまだ定着していない(と、わたしは分析する)。

 西周は学問としては、福沢諭吉(1834~1901)よりもしっかりした土台をつくることに貢献した。しばらく西周について勉強する。