論 考

無理と道理の違い

 力(武力)は平和を担保するというのが軍事力強化の理由だが、本当だろうか。

 もちろん、いずこの国も、武力で他国を従わせるとか、国土拡大のために軍事力を強化するとは言わない。

 かつてアメリカが黒船を使って幕府を恫喝して、開国させたのは誰でも知っている。問題は20世紀、21世紀になっても防衛力の美名のもとに、いざとなれば実力行使の外交を進める国が多い。実に、アメリカは、一貫して黒船外交路線できた。ベトナム戦争の苦い経験の反省・自戒が、アメリカにはないようだ。

 国連の無力が批判される。ズバリ言えば、国連はアメリカが作った。アメリカ抜きで国連の力は出ない。批判さるべきはアメリカである。

 アメリカが国連を無視して、世界秩序を語ることはできない。

 だから世界一の軍事力を保有するアメリカが、全面的に国連活動の旗のもとで活躍すれば、国連はたいした力を発揮するし、アメリカも覇権国だという批判を食らわなくて済む。

 アメリカが大嫌いな中国も、国連と一体化したアメリカに挑戦する必要はないし、それをやっては大義が立たないことを知っている。

 アメリカは自国中心の独自の同盟ネットワークを作るよりも、国連を作った当時の初心に帰るべきである。

 そうでなければ、力が平和を担保するどころか、力と力が衝突するのは避けられない。

 軍事力が、ものごとを建設する力でないことくらい子供でもわかる。子どもすら騙せない理屈を振り回すところに、無理が通れば道理が引っ込むわけで、武力衝突・戦争の芽がどんどん育っている。