論 考

企業における人の定着

 大卒新就職者の3割が3年以内に離職するらしい。

 インターン制度拡充など取り沙汰されているが、それよりも、企業側が退職率を減らすために、なにが必要かを模索したい。

 明治時代から企業は人の定着問題を一貫して抱えてきた。敗戦までは、封建思想が強かったから、「働かせてやる」という気風で、本人が「働く」意志・意欲の涵養がまったくなかった。

 戦後は、だいぶ方向転換して、人を育てるという考え方が強くなった。1970年代までは、おおかたの社長は、「人間尊重」をぶった。それが、終身雇用制度を継続した理論的柱である。

 人は、誰でも育ちたい・育とうという気持ちを抱えている。そこから、人が育つ・企業が育つというわけだ。

 これは、新人に限った話ではない。人が育つことにゴールはない。つねに、個人が育とうという気持ちを忘れないためには、日々過ごしている組織の気風=組織文化が、開放的で活発であることをめざさねばならない。

 しかし、1990年代のバブル崩壊以後、コスト至上主義と上意下達が強くなり、人々相互のコミュニケーションが決定的に劣化した。

 組織は、構成員の相互作用である。個人が、組織に属していることを愉快に思う企業が多いだろうか。

 1980年代にはコーポレート・アイデンティティ(CI)が流行して、おおいに期待したのだが、日本的湿気と、飽きっぽさもあり、しっかりした発展を遂げられなかった。

 いま、日本企業文化は語られることもないくらい、低調である。人事部が、経理部・購買部の下請け化したといわれるようになって、すでに30年。企業文化に真正面から対峙する人と集団が形成されないかぎり、人の定着問題は改善されない。