論 考

軍事力外交はヤクザ並み

 アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で、中国の魏鳳和防衛相が、米国オースティン国防長官に対して、台湾が独立宣言すれば戦争開始をためらわないと語った。

 ここだけ聞くと中国の強硬な態度という印象になるが、さきにバイデン氏が台湾への武力介入を肯定した発言をうけて、釘を刺したわけだ。

 バイデン発言の後、オースティン国防長官が、台湾の独立を支持しないと火消しをやったが、中国が、2つの中国論にきわめて神経を尖らせているのを十分に知った上でのバイデン発言だから、中国にすれば単なる失言とは受け止めない。

 バイデン氏は、中国がカチンとくるのを知らぬわけではない。もちろん、台湾も、米国がいざとなれば助けてくれると単純には喜ばない。緊張拡大する発言は非常に迷惑である。

 このように考えると、紛争を避けるために発言したのではなく、相手を刺激するのが目的に見える。

 いったい外交について、世界のリーダーはいかなる見識を持っているのか。外交の場において、軍事力を背景に、恫喝的言辞を多用するのであれば、暴力団と同じである。

 北朝鮮の挑発行動を批判するが、実は、お手本を見せているのがアメリカである。ASEAN諸国が、アメリカが太平洋へ帰ってきたと挙って歓迎しないのは当たり前だ。

 日本が、また国連非常任理事国に就く。本日の読売は、「国際秩序の再構築へ重い役割」だと社説を掲げるが、アメリカのパシリをやるのなら、初めから成果を期待できない。からっきしだ、と評されるのがオチである。