論 考

安全保障論の大穴

 わが国の食糧自給率はカロリーベースで37%である。

 食料・種・肥料・飼料の海外依存が高い。食料、その生産資材の調達不安が深刻化しているが、国会での議論は聞こえてこない。

 国内農業はますます後退している。狭隘な土地で大規模生産には向いていないし、零細農業者がほとんどである。

 コメや牛乳の減産要請をしたり、麦・大豆・野菜・そば・エサ米・牧草などの交付金をカットする。

 農産物の輸出が1兆円になったとして、次は5兆円をめざすというが、輸入原・材料による加工食品であって、純国産は1,000億円を切る。志の5兆円というよりも大風呂敷にすぎない。

 安全保障論がにぎやかだが、各政党ともに食料安定供給体制の政策はない。「欲しがりません勝までは」の軍国主義路線が健在である。

 安全保障論を主張するなら、まず、人々の生活を盤石にすることをめざすのが手順である。もっと、現状の実態を精緻につかまえて、政治の舵取りをせねばならない。

 船頭多くして船山に上がるというが、船頭らしい船頭が見当たらない。