論 考

あれから36年

 フィリピンを訪れたのは1976年、東南アジアの組合を歴訪して交流した中の1国だった。チーム活動の時間外に、当社の駐在員を訪問して慰問かたがた、学生さんを紹介してもらった。

 大統領マルコス(1917~1989)とその一派の専制政治がピークで、1学生といえども、お気楽に政治談議ができない。「なんともいかんわ」という表情だった。1965年から1986年まで続いたマルコス専制政治は、21年目の1986年に、革命が起こって、女性のコラゾン・アキノ大統領が登場した。彼女は、夫である反マルコスの指導者ベニグノ・アキノ(1932~1983)が暗殺された以後、民主化運動の象徴となっていた。

 それから36年が過ぎて、目下の大統領選挙では、マルコスの息子がレースの先頭を走っている。新聞によれば、偉大な! マルコスの息子だから、強力なリーダーシップを発揮してくれるだろうと期待が大きいそうだ。

 もちろん、専制時代を知っていないからである。民主主義というものは、リーダーではなく、市民1人ひとりが成長しないかぎり、簡単に逆流するものだ。引っくり返したり、破壊するのは簡単だが、民主社会を建設していくのは大変な事業ですねえ。